南ドイツ・オーストリアの旅3日目(8/19) その2

旧市街に戻り、ザルツブルク音楽祭の会場となっているフェルゼンライトシューレへ。フェルゼンライトシューレとは「岩壁の馬術学校」という意味で、かつてここにあった馬術学校を改築して造られた劇場は、岩肌が露出した珍しい構造になっています。この日は15:30からガイドツアーがあったので、15分前に横のチケットショップでチケットを買い、入口前でしばらく待機。周りを見渡すと日本人の姿もちらほら見えました。

女性のガイドさんの案内で劇場の中に入り、ガイドツアースタート。ドイツ語と英語で解説があったので、英語の方を聞きながら進んでいきます。ここは3つの劇場が一カ所に集まっているのですが、まずは一番小さい「モーツァルトのための劇場」へ。音楽祭シーズン真っ最中なので、大道具さんのトンカチの音が聞こえてきました。どうやら舞台上では幕の向こうに役者さんがいるらしく、幕が開いたら写真を撮らないようにとガイドさんが注意していたのですが、日本人のおっちゃんが知ってか知らずか写真を撮ってしまったため、あとから劇場の人が飛んできてすごい剣幕でデータを消すよう注意していました。ガイドさんもガイドツアーのお客さんがそういうことすると私がクビになっちゃうからやめてねと言ってたので、かなり厳しいようですね。

続いてホワイエとフェルゼンライトシューレの間にある、カール・ベーム・ザールへ。ここは幕間にシャンパンなどが饗される華やかな空間です。


↑カール・ベーム・ザールの入口。カール・ベームはオーストリアを代表する指揮者であり、その功績をたたえてこの大広間に名前が付けられています。


↑内部もこの通り、天井が高くて豪華な造りです。


↑そしてここがフェルゼンライトシューレ。舞台のすぐ後ろが岩山というのがとても印象的です。

フェルゼンライトシューレへは今日この後コンサートを見に来る予定だったので、今から俄然楽しみになってきました。続いてスタッフ通用口を通り、隣にある祝祭大劇場へ。ここは大劇場と言うだけあって舞台の広さが左右に100mもあるらしく、その規模に圧倒されました。また客席にはビデオカメラも設置されていたので、音楽祭の模様を収録するのでしょうね。ここでは質問タイムとなりみんな盛んに質問していたのですが、ドイツ語の質問が多くてさっぱりわかりませんでした・・・。


↑祝祭大劇場。普段はオーケストラピットになっているところがステージなのですが、オペラなど大規模な催し物の時はこのように背後の広大な空間を用いるようです。

最後にホワイエに戻り、ガイドツアーは解散です。ここはコンサートを聴く機会がなくても、ザルツブルクに来たならばぜひ見学するべきスポットだと思いました。


↑ホワイエも壁画がすごく、入った瞬間から非日常的なわくわく感を感じます。

フェルゼンライトシューレを出て、ザルツブルクカードの有効期限も切れていたので、近くのバス停にある券売機で一日乗車券を買うことに。しかしお札が使えなかったりして買い方に少々戸惑ってしまいました。値段も地球の歩き方では4.2ユーロとなっているのに実際は3.3ユーロだったりして、さらに混乱。それでもなんとか購入でき、時間に余裕があったので一旦歩いてホテルに戻ることにします。


↑ホテルに戻る途中にあったパン屋さんのショーウィンドウ。楽器を模したパンが飾ってあるあたり、さすが音楽の街です。

途中SPARで翌朝食べる用のサンドイッチとカフェラテを買い、自室に戻ってしばらくUST放送。そしていよいよコンサートに向かうのですが、ザルツブルク音楽祭はある程度フォーマルな場なのでジーンズにTシャツというわけにはいかず、このためだけに持ってきたネクタイを締め、ジャケットを羽織って再びフェルゼンライトシューレへ向かいます。自室にいたときから外は大雨だったのですが、ホテルを出たときも雨はひどいままでした。とりあえず近くのバス停からトロリーバスに乗ると、同じくコンサートに向かうとおぼしき着飾った日本人のグループと鉢合わせ。そして最寄りのバス停で下車・・・したかと思いきや、一個前のバス停で降りてしまい、大雨の中バス停一つ分歩く羽目に。しかし道が渋滞していたせいで、結局バスに追いついてしまいました。

あいにくの天気でしたが、フェルゼンライトシューレの前は正装した華やかな人々が行き交う非日常な空間となっていました。そして「チケットください」の紙を持った人が何人もいて、それほどメジャーな演目じゃないはずなのに、すごいなぁと感嘆。会場内に入るとさらに別世界で、あまりにも場違いな気がして挙動不審になりそうでした(笑)。とりあえずクロークに折り畳み傘を預け、別売だったパンフレットを5.2ユーロで購入。まだ開演までには時間があったので、ガイドツアーでは回れなかった会場内を歩き回ってみることにしました。トイレも海外にしてはきれいですし、ビュッフェも華やかでしたが、やはりカール・ベーム・ザールはシャンパンを飲んでいる人がいたりして、完全に社交界の雰囲気。なんだか落ち着かないので、早々に自分の席に座ることにします。会場内には日本のコンサート会場よりはるかに多くの係員がいて、チケットを見せると座席を素早く案内してくれます。チケットを購入したのが遅かったのでそんなに前の方ではなかったのですが、十分よく見える席でした。しばらくすると私の周りの席も埋まり始めましたが、すぐ近くには日本人の姿はありません。開演5分前になると、外で係員がハンドベルを鳴らす音が聞こえてきました。そして19時になり、いよいよコンサートがスタート。

今日の演目はニコラウス・アーノンクール指揮で、ハイドンのオラトリオ「トビアの帰還」です。オラトリオというとハレルヤコーラスでおなじみのヘンデルの「メサイア」が有名ですが、声楽が入る点がオペラに似ているとはいえ、大道具や衣装などを用いない点が異なります。ハイドンのオラトリオというと「天地創造」などが有名ですが「トビアの帰還」はタイトルすら聞いたことがなく、どんな曲なのか全く知りませんでした。しかし指揮のアーノンクールは、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートで何度か指揮をしていることもあり、私でも知ってるほどの巨匠です。今日のコンサートには「ボスニア・ヘルツェゴビナのための夜」という題が付けられていて、演奏前にアーノンクールがあいさつをしていたのですが、ドイツ語なのでその内容がさっぱりわからなかったのが残念でした。

そしていよいよコンサート開始。最初の出音から圧倒され、合唱が入るともう鳥肌が立つほどのすばらしさでした。後ろが岩山なので音響的にどうなんだろうと思ったのですが、とても良い響きです。ソロパートは正直ちょっと退屈な部分もあったのですが、ソプラノを歌っているSEN GUOという東洋系の女性の歌声がすばらしかったのが印象的でした。トビアの帰還は3時間近くある大作なので、途中で一旦休憩を挟みます。せっかくなので休憩中にステージの前まで行ってみましたが、アーノンクールがここで指揮をしているのかと思うとちょっと胸が熱くなりました。今回はチェンバロも編成に含まれていたので、休憩中に調律師の方が調律をしています。その様子を横目に見ながら、隣のカール・ベーム・ザールに向かうと、開演前と同じようにシャンパンを飲む人々で華やいだ空間になっていました。私も飲もうかと思ったのですが、1杯13ユーロもするのと、体調があまり良くなくてお酒を入れたくなかったのでやめておきました。


↑幕間のカール・ベーム・ザールはこのように華やいだ雰囲気でした。シャンパンをボトルごと買って数人で飲む姿もあり、すごいなーの一言。


↑客席の様子。岩山は青くライトアップされ、上部には字幕が表示されていました。

長丁場なので、後半が始まったときにはすでに21時を回っていました。後半もとにかく合唱がすばらしく、フィナーレの盛り上がりがもうたまりません。当然客席もスタンディングオベーションで、アーノンクールは何度もステージに呼び戻されていましたが、その様子を見ていると強面ですがなかなかお茶目な人だなぁと感じました。興奮冷めやらぬまま席を立って出口に向かいましたが、ロビーを歩いていると急にスタッフ通用口が開き、なんと向こうからアーノンクールが歩いてくるではありませんか!目の前数メートルですれ違い、一瞬のことに何もできませんでしたがとにかく感動しました。アーノンクールももう80歳を超えているのでさすがに少々疲れているようでしたが、やはりただ者ではないオーラが出ています。

興奮を抑えつつクロークで傘を受け取り、フェルゼンライトシューレを後に。近くのバス停に移動しましたが、もう夜遅いせいか10分ほど待って4系統のトロリーバスに乗り、一旦ホテルに戻ります。ホテルでネクタイを外してカメラを持ち、遅い晩ご飯を食べるために再び出発。しかし行こうと思っていたレストランは食事が22:45ラストオーダーだったようで、間に合いませんでした・・・。ほかにレストランがないか探してみたのですが、開いているのはバーばかりで食事にはありつけそうにありません。屋台のホットドッグ屋があったので買おうかとも思ったのですが、少し高かったので結局何も買わずにホテルに帰還。明日の朝ご飯用に買っていたサンドイッチを食べ、床につきました。

明日はザルツブルクを出発してミュンヘンに向かうのですが、それはまた次回。

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