Nの電子講座・電気屋養成編
第7回 デジタルIC(2)



目次



7−8.発振器
ここまでで、フリップフロップ、カウンターといったICをみてきました。ここではカウンターのもっとも大切な応用例、「時間を測る」という機能を実現してみることにしましょう。
まずタイトルにもある「発振」というのは何でしょうか?発振は、外からの入力なしに自身がある決まった周期でパルスを発生し続ける現象のことです。マイクのハウリングも発振の一種です。発振は困った現象を引き起こすこともあるのですがうまく使用すれば非常に役に立ちます。では実際の発振回路を見ていくことにしましょう。

@リング発振器
    これは一番単純な発振方法です。回路図を見れば一目瞭然だと思います。


    1が最初「0」だったとすると、2は「1」、4は「0」、6は「1」になります。ここで出力が最初の1に戻っているので、1は「1」になり、さっきと逆になります。そして2は「0」、4は「1」、6は「0」になって1は再び「0」に戻ります。つまり出力は「1」と「0」を交互に繰り返すわけです。この回路の発振周波数は、使っているゲートの遅延時間(入力が入ってから出力が出るまでの時間)で決まります。つまり4000シリーズのような遅いC-MOSならば周波数は低いですし、74ASシリーズのような高速TTLを使えば、周波数は100MHzを越えます。ちなみに発振周波数は、
      f = 1 / (遅延時間×3)
    でだいたい求まります(わかりますよね?)。この回路は簡単に作れるのが利点ですが、周波数を可変できないのであまり実用的ではありません。


ACR発振器

    CR発振器では、発振周波数をある程度任意に選ぶことができます。早速回路図を見てみましょう。


    この回路での発振周波数は、およそ
      f = 1 / 2.2CR
    で求まります(単位に注意)。5Rの部分は正確にRの5倍でなくとも、だいたいでかまいません。またRにボリュームを使用すると、連続的に周波数を変えることができます。
    このCR発振器は構成が比較的簡単な代わりに、周波数の安定度は今ひとつといったところです。


B水晶発振器

    これはその名の通り、水晶(クリスタル)を用いた発振器です。なんと言っても周波数の安定度がその特徴です。そのため時計に多用されています。ただ回路が多少ややこしくなるのと、うまく発振しないことがあるのが欠点です。回路はTTLとC-MOSの場合で異なり、

      TTLC-MOS

    こうなります。ただしTTLの方は発振しにくいことがあるので、実際にはC-MOSの回路の方がよく使われます。発振周波数はもちろん、水晶固有の周波数です。

    余談:時計の発振源には大きく分けると2つあります。1つは上で述べた水晶発振器です。もう1つはコンセントから電源を取っている時計でしか使えませんが、AC100Vの周波数(50Hz/60Hz)を使う方法です。この周波数もコンピュータで変動がないように管理されているので、割合正確です。


7−9.1秒をカウントする
さて、発振器の作り方はわかったので、これを利用してまずは1秒をカウントしてみることにしましょう。ただ1Hzの水晶はさすがにないので、もっと高い周波数で発振させて、それを以前出てきたT-FFを使って分周することにしましょう。分周は周波数が1/2になりますから、うまく分周後の周波数が1Hzになるような水晶を選ばなければいけません。そこでちょうど2の累乗に等しい水晶を選ぶわけですが、実際には
    ・32.768kHz
    ・4.194304MHz
のどちらかになると思います。前者なら15回、後者なら22回分周すれば1Hzになります。水晶の発振周波数が高いほど、1Hzは正確になるので、ここでは4.194304MHzを使うことにしましょう。
しかし、いくら何でもT-FFを22個も用意するのは大変ですから、ここでは発振のためのNOTゲートとT-FFが一緒になった便利なC-MOS 4521を使うことにしましょう。4521を使うとこれだけの回路で済みます。


ちなみにQ18からQ24にはそれぞれ18回分周から24回分周までの出力が出ています。だから出力をたとえばQ21から取ると、2Hzが得られます。


7−10.60秒カウンタを作る
それではいよいよ秒をカウントしてみましょう。カウンタには10進カウンタが1つのパッケージに2つ入っていて便利な、74HC390を使うことにします。回路図はだいたい予想はつくと思いますが、こうなります。


2つのカウンタのうち、上が1秒の位、下が10秒の位です。あとはこれを拡張 していけば、時計の完成です。

余談:ちなみにこの4521、5Vでの周波数上限type値(平均値)は3.5MHzなんですよね・・・。だから4MHzが動くかどうか、微妙なところなんですが、まあなんとかなるでしょ(笑)。


7−11.スペシャルファンクションIC etc
74シリーズや、40/45シリーズには今まで出てきたIC以外にも、様々な機能を持ったICがあります。それらをここではまとめておきましょう。

@7セグメントLEDドライバー
    これまで出てきたカウンターの出力はすべて2進数で、人間の目にはわかりにくい物でした。これをデジタル数字でわかりやすく表示するためのICがこれです。この出力に抵抗と7セグメントLEDをつなぐだけで完成です。これらのICにはさらに、上の桁の余分な0を消すという機能もあります。
      ・7447
      ・74247(7447とは6と9の字形が違います)
      ・4511


Aデコーダー・デマルチプレクサー

    2進入力で出力の1つを選んだり、逆に入力から2進数を決定したりするIC。特に前者はマイコンのアドレスデコーダーに多用される。
      ・74138
      ・74154
       など多数


Bバスバッファ

    これもマイコン用、弱いマイコンの出力を強くするために使われる。
      ・74244
      ・74245
       など


C3ステートゲート

    トライステート、スリーステートと2通りの読み方があります。「1」「0」ではなく、あたかもスイッチを切ったように回路から切り離される状態を作り出す回路です(この3番目の状態のことを「ハイインピーダンス」といいます)。
    たとえば出力2つを、1つの入力につなげると普通は出力同士がかち合ってしまいますが、一方が出力しているとき、もう片方をハイインピーダンス状態にしておけば、かち合うことはありません。これはゲートだけでなく、ほかのICでも使われています。特にマイコンのバス制御では重要な意味を持ってきます。
      ・74125(3ステート入力が「1」の時、ハイインピーダンス状態)
      ・74126(3ステート入力が「0」の時、ハイインピーダンス状態)
       その他、マイコン関係のICなど


DDラッチ、D-FF

    Dラッチはラッチ入力があるときは前のデータを保持し、入っていない時はデータが筒抜けになる回路です。D-FFは前にも出てきましたね。特にマイコン回路で使いやすいように、8ビット単位でパッケージされたICがあります。これを使うとICが少なくてすみます。
      ・74573
      ・74574
       など


Eシフトレジスター

    シフトレジスターは入力されたデータがクロック入力の度に次々とシフトしていく回路です。パラレル−シリアル変換が出来ますが、最近では余り使われなくなってきました。

Fその他

    その他にも加減算をするICやシングルショット(単安定マルチバイブレーター)、ALU(Arithmetic Logic Unit・算術演算装置)、コンパレーター(比較器)などいろいろありますが、これらを使うことはまれです(コンパレーターは結構使われますが)。




演習問題 →解答はこちら
  1. CR発振器でR=10kΩ、C=47μFの時の発振周波数を求めよ
  2. 60秒カウンタの応用として、1/100秒精度のストップウォッチを設計しなさい。
  3. さらに、59分59秒まではかれる時計を設計しなさい。





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