CDの登場から16年、デジタルオーディオは私たちの身近なところにまで 浸透してきました。そして録音のできるMDと言うメディアもようやく普及 しつつあります。ではいったいデジタルオーディオはレコードに代表される アナログオーディオと比較して、何が優れていたのでしょうか?まずはCD とレコードの比較を通して、デジタルとアナログの違いを考えてみましょう。 CDの利点にはと言ったものがあります。ではデジタルオーディオにはなぜこういったこと が可能なのでしょうか?それは、音の変化の様子をそのまま記録しているの ではなく、いったん数値になおして記録しているからです。具体的には音は 空気の振動なので振動数を決まった時間ごとに数値化(これをサンプリング と言います)しています。そしていったん数値化すれば、その処理が簡単に できるようになります。つまり比較や計算を直接することができるのです。 このおかげで上に述べたようなことが実現可能になったのです。ではデジタ ルの計算とはいったいどんな物なのでしょうか?まずデジタルでは私たちに なじみのある10進数ではなく2進数が用いられています。このことについ てはきっとみなさんも知っていると思います。そして10進数の計算では足 し算や引き算が計算の基本になっていますが、2進数の場合にはそれよりも もっと基本的な「演算」と呼ばれる物に分解できるのです。では、これから その演算とやらを見ていくことにしましょう。
- 雑音が少ない
- 回転ムラがない
- 小さい
- 選曲が簡単
7−1.演算(1)
ではまず、基本となる3つの演算について見ていきましょう。
@AND演算
図記号
AND演算は入力が全て1の時だけ出力も1になるものです。計算としては かけ算を思い浮かべてもらうとわかりやすいでしょうか。1つでも0があれ ば答も0になってしまうわけです。例えば2入力の場合を考えてみましょう。
入力 出力 A B Y 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 1 1
全ての場合を書き出すと上のようになります。このような表を「真理値表」 と言い、よく利用されます。そしてこの関係を式で表すと次のようになります。
・はかけ算の記号なのでわかりやすいと思います。
AOR演算
図記号
OR演算は入力のうちに1つでも1があれば出力も1になるものです。 同じく計算としてはたし算がもっとも近いと思います。ただし、1を 何回足しても1のままです。同じく2入力の場合を考えてみましょう。
入力 出力 A B Y 0 0 0 0 1 1 1 0 1 1 1 1
この関係を式で表すと次のようになります。
記号はまさに足し算そのものです。
BNOT演算
図記号
これは入力を反転したものを出力する演算です。別名「インバーター」とも 呼びます。書くまでもないでしょうが、真理値表を書くと次のようになります。
入力 出力 A Y 0 1 1 0
同じく式で表すと次のようになります
_
Aは「エーバー」と読み、Aの反転を表します。
7−2.演算(2)
ここまでで基本的な3つの演算を紹介しました。この章ではそれを組み 合わせてできる、他の演算を紹介します。
@NAND演算
図記号
NANDと書いて「ナンド」と読みます。これは先ほど出てきたAND演算 の出力にNOT演算を加えた物です。端子に丸が付いているとNOT演算が 付いていることを表しています。NAND演算は入力に1つでも0があれば 出力は1になります。2入力の場合を考えてみると、
入力 出力 A B Y 0 0 1 0 1 1 1 0 1 1 1 0
また、この関係を式で表すと次のようになります。
後で説明しますが、このNAND演算さえ組み合わせれば他のすべての演算 をすることができます。そういう意味では一番基礎になる演算かもしれません。
ANOR演算
図記号
同じくNORと書いて「ノア」と読みます。OR演算の出力にNOTをつけ たものです。入力が全部0の時だけ出力が1になります。2入力の場合は、
入力 出力 A B Y 0 0 1 0 1 0 1 0 0 1 1 0
となります。式で表すと、
です。このNOR演算を使っても他のすべての演算を作ることができますが、 どちらかというとNAND演算の方がよく使われるようです。
BEX−OR演算
図記号
「エクスクルーシブ・オア」と読みます。この演算はちょっと特殊です。 入力がすべて同じ時は0となり、違うときは1になります。とくに入力の 食い違いを見つけたいときなどに使われます。2入力の場合の真理値表を 書くと次のようになります。
入力 出力 A B Y 0 0 0 0 1 1 1 0 1 1 1 0
式で表すと、次の通りです。
勘のいいみなさんなら、「じゃあこの出力にNOTをつけた、EX−NOR と言うのはないの?」と思われるかもしれません。その通りです。もちろん あります。もうわかると思いますので真理値表は省略します。
7−3.演算の組み合わせ
ここでは演算の応用例を見ていきます。実際のICでは演算はゲートと呼ば れる回路の組み合わせで作っていくのですが、ここではそのことも考慮に入 れた応用を考えていきます。
@二重反転
NOT演算については先ほど勉強しました。ではこれを2個直列に接続する とどうなるでしょうか?回路図で書くとこんな感じです。
では出力はどうなるでしょうか?もう想像はついていると思いますが、結局 入力がそのまま出力されます。「いったいこんな物何に使うの?」と思われ るかもしれませんね。これは実際に演算をするICを使うときにわかります が、ICには出力できる電流量が決まっています。具体的には出力につなぐ ことができる演算回路(ゲート)の数が決まっています。この数の事を 「ファンアウト」と言います。ですからたくさんのゲートにつなぎたいとき はまず出力をいくつかにわけて、そこにこの回路を入れて、さらにいくつか に分ければいいことになります。例えば出力が10個のゲートまでに制限さ れているとき(普通のTTLと呼ばれるデジタルICは大抵そうなっていま す)16個のゲートにつなぎたいならば、まず出力を2つに分けてこの回路 を入れ、さらに8個ずつに分ければいいわけです。
ANAND、NORによるNOT演算実際の回路ではNOTゲートが足りなくてNANDゲートやNORゲートが 余っているという状況がよく起こります。このときに役に立つのがこれです。 どうすればいいかというと、入力を全部つないで1つにしてしまうのです。 回路図で書くと下の通りです。
NANDの場合 NORの場合
こうするとNOTゲートと同じ働きをするようになります。これは結構よく つかうので、覚えておいて下さい。。
Bド・モルガンの定理定理という言葉を聞くと「なにやら難しそう」と感じられるかもしれませ んがこれはそんなに難しい物ではありません。この定理には2つあり、ま ずNOR演算の場合の式を書くと次の通りです。
要するに、AND演算の入力をそれぞれ反転すると、NOR演算になると 言うことです。言い換えるとNOT演算が入力についているか出力につい ているかで、演算が変わってくると言うことです。言葉で書くと難しいの で実際の回路図で見てみましょう。
これで一目瞭然ですね。では次にNAND演算の場合を見てみましょう。式は
こうなります。つまりOR演算の入力をそれぞれ反転すると、NAND 演算になるわけです。同じく回路図を見ると
こうなります。
このあたりは少し理解しにくいかもしれませんね。具体的に入力に1とか 0とかを入れてみて、本当に出力がそうなるのかを試してみることをおす すめします。
- EX-NORゲートの図記号を考えなさい。
- NANDゲートだけを使ってANDゲートを作ってみなさい。
- では次は、NANDゲートからNORゲートを作ってみなさい。
- さらに、NANDゲートからORゲートを作ってみなさい。
- EX−OR演算という物が出てきました。この演算は少々特殊なので、あまり このゲートだけが入ったICというのは使われません。ではその他のゲートを 使って、このゲートを作ってみなさい。
- 入力が2つ、出力が1つ、桁上がり有りの2ビットの加算器を設計しなさい。 (これは半加算器といいます。「半」なのは下からの桁上がりを受け付けない からです)。まず真理値表から考えることをおすすめします。
- 〜ハイレベル問題〜 では下からの桁上がりも受け付ける2ビットの加算器(全加算器)を設計しなさい。 (ヒント:半加算器を2つ使えば楽です)
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