Nの電子講座・電気屋養成編
第4回 さまざまな回路



目次



6.電源回路
ここまでで、電子部品にはどんな物があるのかを大まかに説明してきました。別に、一気に部品の名前や働きを覚える必要はありませんが、実際の回路図でこれらの部品が出てきたときに「あ、これはあの時出てきた部品だな」と、思い出せるぐらいにはしておいてください。ではここからは、どんな電子回路を動かすのにも必要とされる、電源について説明していきましょう。

6−1.電源の基礎
さて、一口に電源といっても、電子回路で使われるのは主に直流電源、それも定電圧電源と呼ばれる物がほとんどです。直流電源は良いとして、定電圧電源というのは何でしょうか?一般に電源からたくさんの出力電流を取ろうとすると、その電圧が下がってしまうと言う現象が起こります。例えば、乾電池から1A近い電流を取り出そうとすると、1.5Vの電圧が1V近くまで下がります。これを電圧降下といいます。電圧が電流によって変わってしまっては不都合なので(例えば取り出せる電力(パワー)が少なくなったり、異常動作を起こしたりします)、出力電流の変化があっても電圧の一定な電源が必要とされます。こういう要求を満たす電源が定電圧電源です。もちろん定電圧電源といえども、過大電流を取り出すような無茶な使い方をすると、電圧は降下します。ただその割合が電池などに比べて小さいと言うことです。それではいろんな定電圧電源を見ていくことにしましょう。


6−2.ツェナー・ダイオードを使った定電圧電源
ツェナー・ダイオードについてはダイオードの所で説明したとおりです。逆方向の降伏電圧と言う物を利用するんでしたよね。具体的に、回路図はこのようになります。


とても簡単ですね。この例は入力は12V(ぐらい)、出力は9Vで20mAぐらい取り出せる回路です。例えば一般に出力9Vと書いてあるACアダプターは12Vぐらい出ている物が多いので、そういうACアダプターをこれにつないで、きっちり9Vの定電圧電源を作るのに使えます。
この回路はあんまりたくさんの電流は取り出せませんが、ちょっと定電圧が欲しいと言うところでは使える回路です。

さて、ではこの回路の設計方法の説明に入りましょう。といっても別に身構える必要はないですよ。とっても簡単です。ただ抵抗値を決めるだけです。この例では150Ωになっていますが、これはどう決めるかというと、

    (入力電圧−出力電圧)/取り出したい電流(+α)

という計算をするだけです。この例だと、(12−9)/0.02=150となるわけです。もちろんツェナー・ダイオードは9V用を使ってくださいね。電流は小電力用で20mAは十分流せると思います。ちなみに上の計算式の+αというのは、ツェナー・ダイオード自身も少し電流を食うのでその分を考慮に入れているわけです。だいたい5mAぐらいと考えて下さい。また、出力についているケミコンは、きれいな直流にするための役割をします。だいたい100μF以上の物を使えば大丈夫です(耐圧に注意!)。


6−3.3端子レギュレータを使った定電圧回路
ツェナー・ダイオードを使った電源は簡単に出来る反面、取り出せる電流が少ない、少し安定性に欠けるという欠点があります。出力に1Aぐらい欲しいときは、ここで説明する3端子レギュレータという物が多用されます。3端子レギュレータというのは定電圧回路をIC化したもので、とても簡単に定電圧回路を構成することが出来ます。では実際に回路図を見てみましょう。これは出力が5V,1Aの時の回路図です。


このようになります。3端子レギュレータは7800シリーズというのが有名です。各社が互換品(セカンドソースといいます)を出していて、入手も容易です。78に続く2桁の数字が出力電圧を表していて、7805なら5V用7812なら12V用になっています。また7800シリーズは最大出力電流は1Aなのですが、そんなにいらないという時には0.5AMaxの78M00シリーズ、0.1AMaxの78L00シリーズという物も使われます。

さて、では設計・・・と行きたいところですが、この回路はいじるところがありません。出力したい電圧+2Vぐらいの電圧を入力に入れればそれだけで動作します。とっても簡単ですね。ただ注意が少しあって、
  • 出力電圧+15Vぐらいの電圧を入力に加えない(放熱が追いつきません)
  • 1A近くまで取り出すときはレギュレータに放熱器をつける。
  • コンデンサの耐圧に注意
ということです。それでも簡単なので、この回路はあちこちで使われています。この回路を知っていればまず心配はないでしょう。出力を12Vにしたければ、7805を7812に交換すれば終わりです。


6−4.AC100Vを直流にする
AC電源を直流にしたいことはよくあります。いちいち実験の度に乾電池を使うのはあんまりスマートではないので、やっぱりちゃんとした電源装置を使いたいですね。これにはさっきAでやった回路の前に少し付け足しをすればOKです。まずは回路図を見てみましょう。


さて、付け足した部分の説明をしていきましょう。ヒューズは説明の必要もないと思います。ACを使う場合はやはり入れておいた方が安全です。その次のトランスはAC100VをAC10Vぐらいに下げるために使います。これもちゃんと何V何A出力されるのかが製品によって違いますので、回路にあった物を買えばいいです。この回路の場合はAC9V1Aといったところでしょうか。その次になにやらダイオードが4つついていますが、これはダイオードを4本買ってきてこのようにつなげても良いですし、最初からダイオードが4つ、このようなつなぎかたで1つのパッケージに入ったダイオードブリッジという物が売られているので、それを利用してもOKです。でもダイオードブリッジ使った方が楽ですね。このダイオードブリッジを通ると交流が直流になります、といってもまだ交流のマイナス部分がプラスに来ただけで、脈流と呼ばれる波打った直流になっただけです。これをその次のケミコンに加えると波形がなまって、ちょっと完全な直流に近くなります。さっきのBの回路は入力がすでに割ときれいな直流でしたから、そんなに大きな容量のケミコンでなくても良かったのですが、ここでは今言ったような特別な役割があるので、かなり大きな容量のケミコンを使います。後はさっきと同じです。これも電圧はレギュレータとトランスを変えるだけで、簡単に行うことが出来ます。

補足:レギュレータのそばの0.1μFは何のために入ってるの?と思われるかもしれませんね。3端子レギュレータはとてもデリケートなのでちょっとしたノイズで不安定になってしまうこともあります。これを防いでいるのがこの2つのコンデンサです。ここには積層セラミックを使えばいいと思います。


演習問題 →解答はこちら
  1. ツェナー・ダイオードを使った定電圧回路を作りたい。入力に15V、出力に 12V・25mA、ツェナー・ダイオードでのロスを5mAとすると、入力の抵抗値 は何Ωにすればいいか?

  2. 6V・1Aの出力が欲しいとき使う3端子レギュレータは?また 15V・0.5Aの時は?

  3. AC100Vを使った定電圧回路で、出力は1Aなのにヒューズが0.2Aなのは どうしてか?


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