Nの電子講座・電気屋養成編
第2回 半導体(1)



目次



3−4.直列・並列



4.半導体
いよいよエレクトロニクスの最先端、半導体の話に入ります。さて、半導体という名前は、半導体が電気を全く流さない絶縁体と、良く電気を流す導体の中間で、ある程度電気を流すところから名付けられているのですが、ここで勘の鋭い人ならある疑問が浮かぶと思います。「じゃあ抵抗は半導体じゃないん?あれもそこそこ電気を流すやん?」・・・確かにその通りですね。でも抵抗のことを半導体とは呼びません。それは半導体には抵抗とは違った特徴があるからです。例えば半導体は温度が上がると電流が流れやすくなるが、抵抗はその逆、とか半導体は光が当たると電流の流れやすさが変わる、といった具合です。でもそれよりももっとはっきりしているのは、半導体の材料になる物質は主にシリコンであるという点です。昔はゲルマニウムも使われましたが、最近ではあまり見かけなくなりました。

4−1.P形半導体とN形半導体
さて、半導体は純度を99.999999999%というものすごい数にまで高めてから使うのですが、このまま使う事はまずなく、せっかく純度を高めた半導体の中にわざわざまた不純物を入れて使用します。そうしないと使い道がないからです。そしてこのときに加える不純物の違いでP形半導体とN形半導体の2種類が出来ます。
半導体の原料になるゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si)はW族元素なので、最外殻に電子が4つ回っています。Si単体ならば隣同士の原子が電子によって手を結びあっていて、自由に動ける電子はないのですが、ここに例えばX族のリン(P)やヒ素(As)をちょっと加えると、最外殻の電子が5個あるので、電子が1個余ってしまいます。この電子は自由電子となり、自由に動けるようになります。このような半導体をN形半導体といいます。
またX族ではなくV族のホウ素(B)やインジウム(In)といった元素を加えると、さっきとは逆に最外殻電子が3個しかないので1個不足します。そこで別の電子を無理矢理持ってこようとします。すると取られた方もまた別の所から電子を持ってこようとして、これがずっと続きます。これはあたかも電子の抜け殻(これを正孔といいます)が動いているように見えるので、このような半導体をP形半導体と呼びます。

4−2.ダイオード
さて、こうして出来たP形半導体とN形半導体をくっつけてみます。くっつけるといっても半田付けではだめで、N形半導体の一部をP形にしたり、またその逆をしたりしてくっつけます。そうするとおもしろい働きをするようになるのです。まず電流をP形の方がマイナス、N形の方がプラスになるように流します。すると電子も正孔もはしっこに追いやられて真ん中が空乏層と呼ばれる空っぽの状態になります。ここは抵抗値が高いので、電流はほとんど流れません。逆にP形にプラス、N型にマイナスをかけると、電子も正孔もその境界線を越えることが出来るので、電流が流れるようになります。つまり、P形半導体とN型半導体をくっつけると、1方向にしか電流を流さないようになるのです。このような素子をダイオードといいます。ダイオードの1方向にしか電流を流さない性質を利用して、交流のマイナス部分を切り取って直流にしたり(整流)します。

ダイオードの図記号は

このようになります。AがアノードといってP形、KがカソードといってN形に当たります。つまりアノードに+、カソードに−をつなぐと電流が流れ(順バイアスといいます)、その逆にすると電流が流れない(逆バイアス)わけです。
さて、順バイアスで電流が流れると言っても、ある程度の電圧がなければ流れません。ゲルマニウムダイオードなら0.2V、シリコンダイオードなら0.6Vぐらいです。また逆バイアスで電流が流れないと言うのもやはり限界があって、100V近くになると急に流れるようになります(この時の電圧を降伏電圧といいます)。降伏電圧は半導体に加える不純物の量で調整が出来ます。この原理を使っているのが後述するツェナーダイオードです。

ではいろんなダイオードを見ていきましょう。

名前
特性・用途
ツェナー・ダイオード定電圧を得るために使われる。逆バイアス時の降伏電圧を利用しているため、普通とは逆向きに使用する。だいたい1Aまでの製品がそろっている。実際の製品はたとえばRSコンポーネンツで多数取り扱いがあります。
可変容量ダイオードバリキャップとも呼ばれる。逆バイアス時の空乏層をコンデンサとして使用する。テレビの電子チューナーなどに使用される。
LED光るダイオード。赤・緑・黄のほか、青も登場してきた。数字を表示できるようにした7セグメント形という物もある
フォト・ダイオード光を感じることが出来るダイオード。逆バイアスで使用する。
太陽電池発電作用を持ったダイオード
レーザー・ダイオードレーザー光を放出するダイオード
フォト・インタラプタLEDと受光素子を組み合わせて、物体を検出できるようにしたもの。
オプト・カプラ同じくLEDと受光素子を1つのパッケージに入れて、光でON/OFFを伝える用にした物。回路の絶縁が出来る。

このようにダイオードには様々なバリエーションがあります。この中でも特にLEDは使う機会が多いでしょう。また普通のダイオードにもスイッチング用と整流用があり、用途に応じて使い分けます。また整流の時に便利な、2つや4つのダイオードを1つのパッケージにまとめた、ダイオードブリッジもよく使われます。最後に普通のダイオードとは少し図記号の異なるダイオードを見てみましょう。
    LED
    ツェナーダイオード

4−3.トランジスタ
ダイオードはP形とN型、2つの半導体をくっつけて出来たものでした。では3つくっつけるとどうなるのでしょうか。これはくっつける順番によって、PNPとNPNの2通りがあります。このうちNPNの場合を考えてみましょう。ただしイメージ的には

という感じにPが薄いと考えます。まず、どう電圧をかけても左のNから右のNへは最初電流が流れません。なぜならさっきダイオードでやったように、PからNへは電流が流れますが、その逆はだめだったからです。
しかしここで真ん中のPから右のNに順方向電圧をかけます。そして左のNにプラス、右のNにマイナスをかけます。つまり、こういうことです。(この図でBと書いてあるのが真ん中のPで、Eが右のN、Cが左のNです)

すると流れないはずのCE間に電流が流れるのです。これはほんとはEからBに行くはずの電子がBが薄いために突き抜けてしまい、端のCにまで到達してしまうからです。そしてこれはBE間の小さな電流でCE間の大きな電流を制御できることから、増幅作用があるといえます。
増幅という言葉で勘違いしてほしくないのですが、増幅とは3Vが6Vになったり、100mAが1Aになったりする事ではないということです。つまり小さな力で大きな力をコントロールできる・・・てこのような働きが増幅なのです。

さて、先ほどの図に出てきたBCEという記号は、それぞれBはベース、Cはコレクタ、Eはエミッタの頭文字です。普通トランジスタを使うときは、BE間の電流でCE間の電流を制御するように使います。そしてCE間の電流をBE間の電流で割った物を直流電流増幅率といい、hfeという略号で呼ばれます。これは小さい電流でどれだけ大きな電流が扱えるかを表しています。たとえばhfe500のNPNトランジスタのBE間に10μA流すと、

このようにCE間に最大で5mAの電流が流せます。この場合、電流の向きがBE間とCE間で逆になっているのに注意して下さい。(PNPトランジスタの場合も電流の向きがそれぞれ逆になるだけで、同様に考えることが出来ます)

ではあらためてトランジスタの図記号を見てみましょう。
    NPN
    PNP

このようになります。さて、トランジスタには型番があって、ある程度の分類がされています。例えば2SC1815とか言うような名前が付いているのですが、このうち最初の3つの文字には意味があって、

2:PN接合数(足の数−1)
S:Semiconductor(半導体)
C:分類記号(以下の4つ)
  A・・・PNP形高周波用
  B・・・PNP形低周波用
  C・・・NPN形高周波用
  D・・・NPN形低周波用

ということに一応なっていますが、高周波・低周波の区別はそんなに厳密ではありません。どちらかというと2SB、2SDは大電力形という風に覚えておいた方がいいと思います。

トランジスタに関してはいろいろ理論があって私も勉強中の身なのですが、ここであんまり追求しても難しいだけなので、この辺で止めておきます。詳しくはその筋の本を参照して下さい(他力本願〜)。



演習問題 →解答はこちら
  1. 18Ωと22Ωの抵抗を直列につないだときの合成抵抗値は?また並列につないだ時はどうなるか?

  2. 100μFの電解コンデンサ2つを無極性接続したときの合成容量は?

  3. ツェナーダイオードとはどんなダイオードか?図記号も答えなさい。

  4. 高周波・PNP形のトランジスタの型番はどんな風に始まるか?

  5. 可変容量ダイオードの図記号を考えて答えなさい。




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